The double

cotteの脳内日記

野火

「野火」

 

言わずと知れた

作家・大岡昇平の代表作の戦争小説である

 

 

わたしが録画している数少ないTV番組の中に

Eテレ「100分de名著 」がある。

25分で4週、1冊の本を取り上げている

 

8月が「野火」であった

これまたわたしが大好きな作家の

島田雅彦が指南役として登場するというので

勇気を振り絞って拝見した

 

概要は知っていたが

自ら本を開くことは今までできなかった

 

正直、怖かった

戦争の恐ろしさ

人間の恐ろしさ

最大のタブーとさえ言われている

人肉食への問題に切り込む問題作

 

フィクションといえど

実際に大岡自身もフィリピンの戦地に赴き

捕虜となったのち帰還している

 

膨大な調査と己の体験を踏まえて描かれている

 

やらなければ

自分が死ぬ

生き抜くために

どんなこともしていいのだろうか

 

そんな状況下で

ひとは平時の時にみられていた

人格のまま

それを貫き通せるのだろうか

 

わたしにはそんな聖人のようなことは

きっとできないであろう

わずかな生にすがるだろう

生き残ったとしても

地獄の中をさまようだけかもしれない

 

それでも生きることに

しがみつくであろう

 

理性という蓋の下にある

奥深いくにまだ潜んでいる

消えることのない

獣の本性を

 

自分にもある本性と

向き合うことになるであろう

 

そんな本を避けて生きてきた

 

そんな本性を見てしまい

生き残って

母国に帰ってきた人々は

どんな思いで

余生を過ごしたのであろうか

 

愛おしい人を抱きしめても

かえがえのない人々に囲まれながらも

目に入れても痛くないような孫を膝に抱えながらも

 

一度対面してしまった

獣の本性はきっと拭いきれなかっただろう

 

こんな悲しく、悲惨で、残酷な

経験があるだろうか

戦争はひとりひとりの

心の中に消えることなく

燃え滾るように

めらめらとひとりひとりの精神を蝕んでいたに違いない

何十年経とうとも

 

この小説を読むということは

そんな疑似体験をしなければならないのであろう

 

その覚悟があるのかと

その覚悟を持たねばならぬと

大げさかもしれないが

鼓舞する気持ちで

この番組を4回通して8月の最後の日に観た

 

何年も開かずに買ったときのままの

きれいな「野火」がわたしの本棚の中から

わたしを見ている

 

きっと近いうちに

わたしはその目から逃れらず

「野火」を開くであろう