The double

cotteの脳内日記

人生フルーツ

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映画「人生フルーツ」

 

風が吹けば

枯葉が落ちる

枯葉が落ちれば

土が肥える

土が肥えれば

果実が実る

こつこつ、ゆっくり

人生、フルーツ

 

冒頭この樹木希林のナレーションで

ぐっとこみあげてくるものがすでにあった

 

愛知県のニュータウンの一隅にある平屋

そこが建築家津端ご夫妻の住み家

 

日本の建築業界とは少し距離を置き

街の中で自然と共存していくことを模索しながら

ご夫妻は共に歩んでいるように見えた

 

90歳と87歳

畑を耕し、実ったものを採り

それをいただく

 

まずは自分の手を動かす

こつこつ、ゆっくり

自らが動くことで発見することがあるはずと

信じて

 

夫婦で同じ作業をしている時もあれば

別々のことをしている時もある

 

妻が「こんなことをしてみたい」といえば

「それはいい。してみなさい、してみなさい」と

手放しですすめる夫

 

夫が妻に相談なしに決断したことも

「あら、それはちょっと難儀になるわ」と思っても

黙って対処する妻

 

いっつもお金はなかったね

 

と2人してうんうんと頷きながら微笑む

 

先に見えるであろう

同じ景色を目指す2人

 

 

美しい 美しい2人

 

畑の草むしりが終わり昼寝をしたまま

2度と目が覚めることはなかった夫

90歳の大往生であった

 

その姿はほんとうに眠っているようだった

 

最期に携わった仕事が

建築家・津端修一の追い求めてきた想いを

余すことなく受け継いでいこうとする人々に出会えたようで

涙が溢れた

 

ご本人もそれが心の底から嬉しかったのだろう

そして、これが最期の仕事になると覚悟もあったのだろう

全てを無償で引き受けていた

 

亡くなった後

着工がはじまった

完成したとしても

またそこから育てていく建物

まわりの自然とともに育っていく建物

そこに集う人々も育っていく建物

 

映画を観ながら

おそらく一番耳にしたであろうことば

 

「ありがとう」

 

このご夫妻はほんとうに

お互いに

些細なことでも

必ず

 

「ありがとう」と伝えていた

 

このたった5文字のことば

 

わたしは最後にいつ夫に言っただろうか

 

共に50年歩み続けたご夫妻の

 

ありがとう には

 

重みと輝きがあった

 

まさに大きく実った果実のようであった